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エピソード B 
日経サービスの警備は120点だ

もう10年ほど前のこと、当社で総合管理をさせていただいている某大学の理事長にごあいさつにいったとき、次のように言われました。
「日経サービスさんは、清掃は100点だ。しかし、警備はとてもじゃないが合格点とは言えないな」

当時の私たちは、管理体制も教育体制も整備できておらず、現場によってサービスにムラがありました。
その現場は、管理が行き届かず、社員の定着率も悪く、とても質の低い警備になってしまっていたのです。
守衛室で、皆にその理事長の言葉を伝えると、全員が悲しい目をしていました。
しかし、たった一人、当時まだ新入社員だったAさんだけは違いました。
「同じ会社なのに、清掃は100点で、警備は不合格なんて言われて皆悔しくないのか。俺らも100点と言われるように、現場を変えようじゃないか?」
ところが、同僚の警備員は皆がうつむき、返事をする人はいませんでした。

その夜、Aさんは、悔しくて眠れなかったそうです。

その翌日、Aさんは、出勤すると、制服に着替え、近隣の駅から大学の正門までの数百メートルの道路に落ちている空き缶やたばこの吸い殻を拾い始めました。
心無い学生が、ポイ捨てをして、近隣住民から連日のようにクレームが届いていたからです。
それを終えると、彼は正門の横に立ち、通学してくる学生や教職員、通りかかるご近所の方に元気よくあいさつを始めました。
元々、ガソリンスタンドを経営していたAさん、元気なあいさつはお手の物です。
「おはようございます!」「・・・」
「おはようございます!」「・・・」

しかし、あいさつをしても、目を合わす人は少なく、誰ひとり返事もしてくれません。
それでも彼は、あきらめませんでした。
雨の日も、風の日も、暑い日も、寒い日も、毎日正門に立ち、あいさつを繰り返したのです。
数年後、Aさんは、当時の自分のことを思い出し、「バカですね。悔しさのあまり必死になって、あの時は、誰も振り向いてくれず、まるでドンキホーテのようでしたよ」と笑っていました。

しかし、彼の行動は少しずつ現場の雰囲気を変えていきました。時間の経過とともに、彼の行動に共感する警備員が増えていったのです。
Aさん一人にやらせるのは、申し訳ないということで、朝の駅から大学までのごみ拾いが当番制になりました。
そして、あいさつについても、全員が順番に正門の横に立ち、元気よく声をかけるようになりました。

そういう中、徐々にご近所の方々の態度も変わってきました。
それまでは、ごみをポイ捨てする学生や大声で話しながら広がって通学する学生を敵視するあまり、犬の散歩のつど、毎日必ずクレームを言ってくるご老人がいました。
その彼ですら「おはよう。毎日ご苦労さんやね」とあいさつを返してくれるようになったのです。
しばらくすると、ポイ捨ては激減しました。
きれいな場所は、汚しづらいという心理が働いたこと、そして毎日ごみを拾う警備員の姿が、学生たちを反省させたのでしょう。

変わってきたのは、それだけではありません。
学生たちの態度にも、少しずつ、少しずつ変化がありました。
それまでは、いくら「おはようございます」とあいさつをしても無視していた学生たちの中から、「おはようございます」と返す人が現れたのです。
「おはようございます」「・・・」
「おはようございます」「おはようございます」

「おはようございます」「・・・」
最初は、十人に一人程度でしたが、月日とともにその数はどんどん増えていきました。
やがて、半分ぐらいの学生が「おはようございます!」「おっちゃん、おはよう」と元気よくあいさつしてくれるようになりました。また、声は出さない学生でも「ぺこっ」と会釈を返す人が多くなりました。

翌年の春、Aさんは、皆から推されて警備隊長になり、現場をリードするようになりました。そのころになると現場のムードは一新され、皆が意欲満々で仕事に取り組んでいました。
受付の仕方や施錠管理の方法など、仕事のやり方についても様々な提案が出され、次々に改善が進んでいきました。
皆がイキイキと仕事に取組み、数年間は一人の退職者も出なかったほどです。

そういう中で迎えた卒業式。
大学幹部の方々の卒業を祝う言葉の後で、卒業生代表のスピーチがありました。
その学生は、スピーチの中でこう言ったのです。
「私は、毎朝、校門であいさつをしてくれる警備員さんたちにとても感謝しています。4年間の学生生活の中には、苦しいこと、つらいこともありました。そして、時には学校に行くのが嫌な日もありました。でも、大学に行けば、警備員さんが毎日必ず『おはようございます』と元気よく迎えてくれる。僕にもあいさつをしてくれる。それがものすごくうれしかった。それが学校に向かうエネルギーを与えてくれた。警備員の皆さん、本当にありがとうございました。僕がこうして卒業できたのは、皆さんのお陰です。」
卒業式ですので、残念ながら当社の社員は誰もその場にはいませんでしたが、とても感動的なスピーチだったそうです。

年度が替わり、理事長のもとにあいさつに行くと、今度はこう言われました。
「今年の卒業生のスピーチでは、教授や事務職員たちに対しては、一言の感謝の言葉もなかった。それなのに、警備員さんには、感謝の言葉が出るんだからまいったよ。以前は、警備は不合格点だった。しかし、その言葉は訂正する。日経サービスの警備は120点だよ」
現場の皆にその言葉を伝えると、皆も飛び上がって喜んでくれました。

その後、こちらの大学の卒業式では、学生代表のスピーチで毎年のように「警備員さん、ありがとう」「掃除のおばちゃん、ありがとう」と言われ続けています。
今日も私たちのサービスは、学生たちに勇気と元気を与え続けています。
悔しさのあまり始めたたった一人の行動、それが、これだけ大きな影響を残したのです。

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